白くて弾力のあるくずもちに、きな粉と黒蜜を絡める。どのくらいかけると好みの味になるか、どうやったらうまく絡むか。何遍試しても「これぞ100点」がなくて、一口ずつ挑戦する楽しみがあります。
葛粉から作る透明な葛餅とは異なり、小麦のでんぷんを1年以上発酵させて蒸し上げるくずもちは関東の名物です。浅野屋さんは、東京都大田区の東急池上駅前にある老舗。母方の実家に近いので、幼いころからお店に行ったり、お土産にいただいたりして親しんでいました。
甘いものは我慢して何とか食べるというほど苦手なので、くずもちそのものに甘みを感じないのが良いですね。きな粉と黒蜜で、一口ごとに味のバランスをいろいろと調整できるのがうれしい。浅野屋さんのくずもちに付くきな粉には砂糖が混ざっていないし、黒蜜も独特の苦みがおいしく感じられて好きです。
芝居を作っていると、無自覚にもプレッシャーを感じて消化能力が弱り、胃もたれしてしまう時期があります。そんな時でも、くずもちならいくらでも食べられるのです。
◆東京都大田区池上6の2の15(電話03・3751・0238)。1人前350円~。原則[前]10時半~売り切れ次第終了。原則[月][木]休み。喫茶室は休業中。
みやぎ・さとし 演出家。SPAC(静岡県舞台芸術センター)芸術総監督。1959年東京都生まれ。11月6日までの[土][日]、静岡芸術劇場(静岡市駿河区)で「ペール・ギュント」を上演中。来年2~3月、同所で「人形の家」を上演。