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河合敦さん
「港常」のあんずちゃん

「港常」のあんずちゃん

 小学4年生のころ、塾が終わるとみんなで自転車に乗ってよく立ち寄ったのが駄菓子屋。マンガを立ち読みして、このあんずちゃんを買っていました。水あめの甘さとアンズのほどよい酸っぱさがおいしかった。勉強で疲れた頭によかったのかも。大人になって、たまに思い出しては食べたくなって、駄菓子屋をのぞいていました。駄菓子屋が減った40代後半からは、年に何回かネットで箱買いをしています。

 個別包装をうまく切るにはコツがいります。中身を全部出すのも難しい。二つに折ってから絞って四つにたたんで・・・とやり方があるんです。

 10時間とか本を執筆していると脳が疲れるのか、あんずちゃんが食べたくなります。机の横に置いた箱から1個だけのつもりが、気づくと3個食べていたりしています。

 甘い物を庶民が食べるようになったのは、江戸時代の中期から。すでに戦国時代、金平糖などを宣教師らがもたらしましたが、布教のためだったようです。戦国時代はせいぜい、切ると甘い汁が出るツルを煮詰めたものくらいで、ハチミツはあっても数が少なかった。当時、あんずちゃんがあったら、甘さと酸っぱさで疲労回復に役立ったでしょうね。

 ◆東京、神奈川、千葉、埼玉を中心にスーパーなどで販売。希望小売価格30円(税抜き)。電話港常(03・3841・0168)。


 かわい・あつし 歴史作家。1965年東京都生まれ。多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。著書に「江戸500藩全解剖」(朝日新書)、「徳川家康と9つの危機」(PHP新書)など。

 

(2022年12月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)