子どもの頃のごちそうは、母が作ってくれるプリンでした。作ってもらわないと食べられないので、いつかバケツみたいなカップで、でっかいプリンを作るのが夢だったな。そんなプリン好きを以前から知っていた事務所の副社長が、現場によく差し入れてくれたのがパステルのプリンなんです。
探究したくなる、っていうのかな。まず食感と滑らかさ。味わったことのない舌触りに衝撃を受けて、その後に甘さが広がってくる。なんじゃこりゃって思ったら、もう3口、4口進んでる。3分の1は夢中になって、3分の2は満足感の中でじっくり味わいながら、最終的にリラックスさせてくれる。
五感をいつも研ぎ澄ましてないと、演出家の役目って務まらないなと思うんです。食べると集中力がなくなってしまう人間なので、稽古中は夜まで食事をしません。おなかいっぱい食べた後だと、芝居を判断できなくなっちゃうんです。
その代わりに、稽古中は本当に甘いものが欲しくなる。ほんの一時で脳を活性化して、作品作りを助けてくれるものがパステルですね。差し入れで来たら、もう最高。うまみとともに、「よし、やるぞ!」ってまた前へ進ませてくれます。
(聞き手・島貫柚子)
◆関東・東海・関西の百貨店やイオンモールなどで販売。360円。☎問い合わせ窓口0120・96・7722(土日祝、年末年始を除く[前]10時~[後]5時)。
きしたに・ごろう 俳優・演出家。東京都出身。シェークスピア「ベニスの商人」を関西弁にした音楽劇「歌うシャイロック」(作、演出・鄭義信)で主役を演じる。京都・南座(2月9~21日)、福岡・博多座(2月25~27日)、東京・池袋のサンシャイン劇場(3月16~26日)で公演予定。