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渡辺豪「Aevum」

タグチヒロシ・アートコレクション 
てくてく現代美術世界一周(岐阜県美術館)

 


美博ノート
2009-2012 ©Go Watanabe
Courtesy of ARATANIURANO

 

 展示室で涼しげな視線を感じる。まばたきの後の目の動きのなまなましさに映像に釘付けになった。

 渡辺豪はコンピューター上で制作した頭部に、実在の女性を撮影して得た肌のきめや眉毛などの情報をもとにした顔表面を貼り、人ともモノとも言い難い「彼女」を作った。

 だんだんまぶたが重くなり、うとうとしたかと思ったら、はっと目を見開き、生き生きと輝かせる「彼女」。見つめていくうちだんだんとしみやホクロまで見えてきて、これは錯覚だろうかと混乱する。

 18分間の映像で、輪郭や目鼻立ちは変わらないが、顔表面はモデルとなった3人の女性のものに順番に移り変わる。表情が豊かに見えたのは、眉毛や唇がゆっくりと別人のものに変わったからだった。

 自分が見ているものは一体何なのか。渡辺が一貫して追究し続けるテーマだ。

(2015年4月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)