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ゴッホ
「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」

華麗なるジャポニスム展(名古屋ボストン美術館)

 


美博ノート
フィンセント・ファン・ゴッホ 1889年
Bequest of John T. Spaulding 48.548
Photo © 2015 MFA, Boston.

 

 ゴッホは1888年にパリから南仏アルルに移り住んだ。そこから画家ベルナールに宛てた手紙に「陽光に満ちあふれた景色は、日本の版画で見る風景のようだ」と書いたという。日本への憧れがうかがえる。

 本作は、近所に暮らしていたルーラン夫人の肖像画だ。互いに引き立て合う補色の赤と緑。太い輪郭線と装飾性のある背景。浮世絵の特徴である色鮮やかな色彩や平面性を自分なりに取り入れたことで、画面全体に生命感があふれ、旧来の西洋にはなかった絵画表現を確立した。

 歌川国貞と広重の浮世絵「当盛十花撰(とうせいじゅっかせん) 夏菊」の背景では、架空の菊の花が役者2人を引き立てている。ルーラン夫人の背景にもまた、花模様の壁紙が配されている。装飾的な背景で主題を引き立てる浮世絵の自由な発想を取り入れたのだろう。

(2015年4月15日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)