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歌川国芳「荷宝蔵(にたからぐら)壁のむだ書」

いつだって猫展(名古屋市博物館)

 


美博ノート
1848年ごろ、個人蔵

 

 江戸時代後期の「猫ブーム」をたどる本展。浮世絵を中心に約200点で、身近な生き物、猫の多様な姿を紹介する。

 土蔵の壁を引っかいた落書きのように描かれるのは、歌舞伎役者の似顔絵だ。人気絵師、歌川国芳による大判錦絵三枚続きの一枚。シンプルな線で役者の特徴を巧みにとらえる。退色しているが、かつては赤や黄など色が入り、アクセントになっていた。落款も落書き風で粋だ。

 中央で目をひくのは、手拭いをかぶって踊るユーモラスな猫。尾が二股に分かれている妖怪「猫また」だ。1847(弘化4)年に上演された、化け猫の怪異を描く歌舞伎「尾上梅寿一代噺(おのえきくごろういちだいばなし)」に登場し、画中の「大でき」は、これが大評判だったという意味。化け猫ものは大人気で、繰り返し上演された。

(2015年5月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)