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宮川香山「崖に鷹大花瓶」

世界に挑んだ明治の美展(ヤマザキマザック美術館)

 


美博ノート
明治前期、山本博士蔵

 

 明治期に超絶技巧で世界を驚かせた名陶工の初代・宮川香山(こうざん)。作品のほとんどが海外に輸出されたため「幻の焼き物」と呼ばれたが、近年コレクターの手により国内へ戻りつつある。本展では同時代のアールヌーボー作品とあわせて49点が並ぶ。

 一対の大ぶりな花瓶。香山は陶器に動植物などの模様を浮き上がらせた「高浮彫(たかうきぼり)」の手法を極めた。ろくろでひいた花瓶本体に、タカなどのモチーフをまるで本物のように粘土細工してはりつけ、焼き上げた。香山は横浜にあった自身の工房「真葛(まくず)窯」で動物を飼い、リアルさを追求したという。当時海外向けに金で絵付けした陶芸作品が人気だったが、金の海外流出が国の損失になると考えた香山は金を使わなかった。

(2015年6月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)