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「パリッシー・ウェア」

世界に挑んだ明治の美展(ヤマザキマザック美術館)

 


美博ノート
19世紀、東京国立博物館蔵
Image:TMN Image Archives

 

 ヘビや蛾(が)、カタツムリなどの生き物がまるで生きているように高浮彫(たかうきぼり)で絵皿に表現されている。中世・ルネサンス期に活躍したフランスの陶工ベルナール・パリッシーの作品を復刻した。作者はわかっていない。

 19世紀後半、欧州では植物の曲線美をいかしたアールヌーボー文化が花開く。動植物を題材にしたパリッシーの作品も再び脚光を浴びた。

 この絵皿は1876(明治9)年、英サウス・ケンジントン博物館から日本に寄贈された。私財をなげうって研究に没頭したパリッシーの逸話はサミュエル・スマイルズの「西国立志編」などで明治の日本人に広く知られていた。欧州の流行を作品にいかした陶工、宮川香山もこの絵皿を目にしただろうか。

(2015年7月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)