|
1971年、常滑市蔵 |
「土に還る」シリーズは、鯉江が30代で注目された陶のオブジェだ。モチーフは鯉江自身の顔。今展の出品作は3点連作で、時と共に顔の形が崩れ落ちて「土に還る」様を表現した。
石膏(せっこう)の型の中にシェルベンを詰め、焼き固めている。シェルベンは、衛生陶器を再生用に細かく砕いた粉末。衛生陶器の製造が盛んな愛知県常滑市出身の鯉江にとって、身近な素材であり、「常滑の作家」である自負とも捉えられると推察される。
鯉江は20代の頃から土の配合や焼成手法など試行錯誤をしながら作陶を続けている。本作もその積み重ねの上に制作された。形の新しさなど表面的な創作性にとらわれず、次世代の作家には、陶芸の基礎を大切にして欲しい――本作の展示には、そんな思いを込めたという。