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「英国手茶盌(わん)」

鯉江良二展 土に還る それ以前・それ以後
(愛知県陶磁美術館)

 


美博ノート
1991年、山木美術蔵

 

 本作はイギリスのウェールズで制作された。左右非対称のゆがんだような形、緑がかった色は、織部のような風合い。作品の表面に刻まれた太い線は、鯉江の名前の「良」という文字を左に90度倒したサインだ。

 1986年から、鯉江はスペインをはじめ韓国やアメリカなどの各国におもむき制作してきた。現地の土を掘り、釉薬(ゆうやく)は植物を灰にして作ったという。れんがを組んだり、土管を使ったりして窯も用意した。「風土と密接に関わってきた陶芸本来の姿勢に立ち返っているのでは」と学芸員の大長(だいちょう)智広さんはみる。

 展覧会では、1990年に鯉江がイスラエルで行った制作ワークショップの映像が流れる。談笑しながら、蹴(け)ろくろを回す鯉江は満面の笑みを浮かべている。

(2015年7月29日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)