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今村文「温かい家」

芸術植物園展(愛知県美術館)

 


美博ノート
今村文「温かい家」(2015)、作家蔵

 

 根っこまで乾かした、押し花のような風合い。本作は、若手現代美術家の今村文(ふみ)さんが描いた花の絵。架空の植物を水彩で描き、細かく切り抜いてパラフィン紙に貼り付けたコラージュ作品だ。

 押し花は生きている植物を押しつぶすため、死を暗示するものとして捉えられることもあるという。だが、今村さんの作品は葉に虫食いのような穴があいていたり、根が折り重なっていたり。紙に描かれた架空の花の絵が、逆にかつては生きていたかのような温かさを生んでいる。

 展示室には作品が30枚並ぶ。その周囲を、採集してきたばかりの植物が散らばるかのように、切り抜かれた花の絵が壁一面に舞う。赤い花は生命を象徴する血の色だという。

(2015年8月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)