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葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」

春信一番!写楽二番!(静岡市美術館)

 


美博ノート
天保元―3年(1830―32)頃 横大判錦絵 フィラデルフィア美術館
Philadelphia Museum of Art: Gift of Mrs.Moncure Biddle in memory of Ernest Fenollosa,1958

 

 今から250年前、多色刷りの浮世絵版画は誕生した。本展では米フィラデルフィア美術館のコレクションから150点を厳選し、時代ごとに展示して歩みをたどる。

 錦のように美しいことから「錦絵」と呼ばれた浮世絵は、役者絵や美人画など人物が中心だったが、成熟期になると旅行ブームも相まって風景を題材にした作品が生まれた。

 本作はシリーズの代表的な一枚。赤富士の輪郭線はシャープで、山肌の木目ははっきりと見えることなどから、初期の刷りと推測されている。主版の線は黒が主流だが、北斎は「本藍」を用い、色版では「ベロ藍」と呼ばれる西欧顔料を使って、さわやかな情景を描き出した。

(2015年9月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)