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清水三年坂美術館蔵 |
多くは海外輸出用に制作され、国内で目にする機会がほぼなかった明治の工芸品の数々。本展では、京都・清水三年坂美術館館長の村田理如(まさゆき)さんの収集品から、七宝や金工、漆工など9分野にわたる約160点が一堂にお目見えする。
幕末期から明治初期にかけて表現の幅を広げた七宝。それまではくぼみで文様の輪郭を作る象嵌(ぞうがん)七宝が主流だったが、金や銀、銅などの金属で輪郭線を引く有線七宝の技法が確立され、細密な文様が描かれるようになった。一方、本作の作者、濤川惣助は無線七宝を考案。釉薬(ゆうやく)をさした後に金属線を取り除くため、隣り合う釉薬が混ざり合い、ぼかしやにじみのような表現も可能となった。本作では、葉やツル、青い花びらは有線七宝ではっきりと、白い花びらは無線七宝で柔らかく表現し、遠近感を生み出している。