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安藤緑山(ろくざん)「竹の子、梅」

超絶技巧!明治工芸の粋(岐阜県現代陶芸美術館)

 


美博ノート
清水三年坂美術館蔵

 

 本物のタケノコと梅にしか見えないが、実は象牙の彫刻。象牙は江戸時代には根付けやきせる筒など生活道具の材料に用いられ、明治時代になると輸出用に象牙の彫刻「牙彫(げちょう)」が作られるようになった。

 全長37センチのタケノコは象牙の形を生かした造形。根っこは収穫したてのタケノコ特有のピンク色に染まっている。皮の縁の毛羽だった部分や梅の葉の虫食いなど、刻々と変化するものの一瞬を鮮明に写しとる技術は、まさに超絶技巧といえる。

 白い象牙本来の色を生かすものが多いなか、安藤緑山はこのような細かな彫刻と彩色を施し、野菜や果物、植物などを実物と見まごうほど精密に再現した。だが残念なことに、この彩色方法は受け継がれず、一代で途絶えたと言われている。

(2015年10月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)