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©Sophie Calle/ADAGP,Paris,2015 |
2010年、訪れたイスタンブールが盲目の街と呼ばれていたことを故事から知ったカルは、24年ぶりに目の不自由な人をテーマにした作品に取りかかった。NPO法人などを通じて出会った13人に「最後に見たものを説明してほしい」と頼み、彼らの肖像写真と回答、再現した写真を組み合わせた。
事故に巻き込まれた車中から見た風景、脳腫瘍(のうしゅよう)の手術の直前に見たハンサムな医師の白衣姿など、視力が失われてもなお、彼らが語る景色は生々しく、鮮烈だ。一方で、夫や息子の顔だと答えた人もいた。かつて目にした光景が日々薄れていく中で、これだけは記憶にとどめておきたいという大切なイメージへの執着が伝わる。
本作の女性は、母親と絨毯(じゅうたん)に刺繡(ししゅう)をしている最中に目がかすみ、突然、絨毯や刺繡の花びらの色が視界の中でごちゃ混ぜになっていった様子を語る。その夜、彼女は失明し、母親が一人で絨毯を仕上げたという。