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1983年、豊田市美術館蔵 |
古い布切れで、身の回りのものを詩情豊かに表現したアプリケ作家・宮脇綾子(1905~95年)。本展は約200点を集め、創作の軌跡をたどる。
本作は、正月の雑煮用に、熊本の親類から送られた干しエビを題材にした。鮮やかな布は「五月のぼり」だという。エビの目や、束ねるわらの風合いは本物そっくり。モチーフをよく見つめ、布が持つ色合いや柄、質感をうまく生かした。豊かな表現は「たくさんの素材に囲まれ、それらを熟知していたことで生み出された」と学芸員の鬼頭美奈子さん。布一枚一枚に、織り、染めた人々を思い、芸術品として大切に扱ったという。
落款のような「あ」の文字は、綾子の「あ」、アプリケの「あ」、驚きの「あ」、ありがとうの「あ」を表している。