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「さしみを取ったあとのかれい」

宮脇綾子の世界展(名都美術館)

 


美博ノート
1970年、豊田市美術館蔵

 

 枯れた花、脚が一本もげたカニ、野菜の断面。宮脇は、身近な全てのものに美を感じ、いきいきと表現していった。

 背景の緑は、使い古したタオル、カレイの赤はフェルトが使われている。周囲を飾る白い花は、追悼の気持ちだろうか。素朴な味わいの縫い目が、温かみを感じさせる。

 自然の造形の美しさ、面白さを表現したいと語った宮脇。観察とデッサンを重視した洋画家の夫・晴から大きな影響を受けた。手本は台所の野菜や魚、庭の草花。深い観察は、単純化した輪郭線を生み出していく。晴は作品の理解者であり、作品が出来ると最初に見せたという。

 仕事部屋には、モデルになった魚の干物、気に入りの人形、大量の専門書などがにぎやかに並んだ。

(2016年2月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)