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1953年、豊田市美術館蔵 |
親しかった女優の杉村春子から贈られた着物の端切れを使い、屏風(びょうぶ)に仕立てた作品。初舞台で着た長じゅばんはイチゴに、初月給で母親に買った銘仙は、カレイに生まれ変わった。杉村は、出会ってすぐに大切な品を宮脇に託した。「一目で人間性や芸術性を見抜いたのでは」と学芸員の鬼頭美奈子さん。
終戦後、「何かできることを」と40歳で創作を始めた宮脇。身近な布で、家事の合間に生み出された作品は、作り出す喜びが伝わってくる。強い好奇心と向上心が芸術へと高めた。
2人は、忙しい中でも互いの舞台や個展に足を運んだ。「女優も芸術家も、1人で闘う厳しさを背負っている。同志として、影響を受けていたのでは」と鬼頭さん。本作は、2人の深い関係性を物語る。