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「Crystal Line」

桃紅のしごと 題字(岐阜現代美術館)

 


美博ノート
1977年 リトグラフ・手彩色

 

 書から抽象画へ自身の表現の場を見いだした篠田桃紅は、1956年、単身渡米を果たす。既成概念やタブーを打ち破る自由なニューヨークの空気は、桃紅の表現を解放していった。

 帰国後、水墨の線の美しさを追求した作品を次々と制作する中で、リトグラフにも挑戦。版に筆で線を描き、刷り師が何枚も刷る。そして必ず刷り上がった一枚一枚に筆を入れた。「刷り師の元に行ってしまった作品を、もう一度自分に引き寄せたいという思いがあったようです」と学芸員の宮崎香里さん。

 本作は30枚刷られたうちの22枚目。黒い版画の上に、赤と金泥の線がすっと引かれている。11枚目の作品は、1979年に発売されたジャズピアニスト秋吉敏子率いるバンドのレコードジャケットにも採用された。

(2016年2月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)