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嘉永5(1852)年 大判錦絵 |
幕末に活躍した浮世絵師・歌川国芳(1797~1861)が、木曽街道(中山道)をテーマに描いた71枚の揃物(そろいもの)を紹介している本展。画中で大きく採りあげられているのは、街道の宿場風景ではなく、宿場にまつわる説話や地名から連想される人物たち。さらに、宿場名の語呂と描写のテーマを掛けた駄じゃれや言葉遊びも盛り込まれており、国芳の機知とユーモアが随所にちりばめられた構図だ。
本作は、錦絵や歌舞伎などでも多く採りあげられている曽我兄弟のあだ討ちを描写している。父の仇(かたき)である工藤祐経の居場所を突き止めた兄弟が、今まさに乗り込もうとする緊迫した場面。祐経が居ることを確かめ合い、手ぶりで合図を送っている。「居るか?」「居ます」のやり取りが、宿場名の「今須(います)」に掛かっている。