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1852(嘉永5)年 大判錦絵 |
武田信玄と上杉謙信の確執に、諏訪湖の白狐伝説などを絡めた時代物で歌舞伎の演目にもなった「本朝廿四孝(にじゅうしこう)」が題材。
画中では「奥庭狐火(きつねび)の段」を採りあげ、謙信の娘・八重垣姫の一途な恋心を表現している。諏訪明神の使いとされる狐(きつね)の霊力を借りて、思いを寄せる許婚(いいなずけ)のもとへ向かう場面だという。
武将の姿や合戦の様子を捉えた武者絵を得意とした国芳だが、学芸員の前田詩織さんは、「美人画の要素もあり、狐のシルエットが幻想的で美しい作品」と話す。
一連の作品には、コマ絵と呼ばれる、枠取りした画面の中に街道風景が描かれた。ここでは武田家の家紋である武田菱(びし)で、他にも様々に趣向を凝らしている。「当時の人々は、旅の気分を味わうと共に、謎解きを楽しんでいたのでは」と前田さん。