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「下諏訪 八重垣姫」

国芳 謎解き木曽街道六十九次之内(中山道広重美術館)

 


美博ノート
1852(嘉永5)年 大判錦絵

 

 武田信玄と上杉謙信の確執に、諏訪湖の白狐伝説などを絡めた時代物で歌舞伎の演目にもなった「本朝廿四孝(にじゅうしこう)」が題材。

 画中では「奥庭狐火(きつねび)の段」を採りあげ、謙信の娘・八重垣姫の一途な恋心を表現している。諏訪明神の使いとされる狐(きつね)の霊力を借りて、思いを寄せる許婚(いいなずけ)のもとへ向かう場面だという。

 武将の姿や合戦の様子を捉えた武者絵を得意とした国芳だが、学芸員の前田詩織さんは、「美人画の要素もあり、狐のシルエットが幻想的で美しい作品」と話す。

 一連の作品には、コマ絵と呼ばれる、枠取りした画面の中に街道風景が描かれた。ここでは武田家の家紋である武田菱(びし)で、他にも様々に趣向を凝らしている。「当時の人々は、旅の気分を味わうと共に、謎解きを楽しんでいたのでは」と前田さん。

(2016年3月16日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)