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歌川国芳「源氏雲浮世画合(えあわせ) 玉葛(たまかずら)」

浮世絵から見る海女(海の博物館)

 


美博ノート
1843~47年、鯨と海女の研究室(個人)蔵

 

 人間よりも大きなタコに追われる海女。左手に宝玉を持ち、右手で短刀を振りかざす。

 本作は、香川県さぬき市志度に伝わる「海女の玉取り伝説」を題材にしている。

 1300年余り前、唐から贈られた宝玉が竜神に奪われてしまう。藤原不比等(ふひと)は高い身分を隠して志度へ行き、恋仲となった海女に玉の奪還を頼む。海女は玉を取り返してくるが、力尽きて息絶えたという悲話だ。

 この題材の場合、海女を追うのは主に竜神だが、本作ではタコに置き換えている。もともと浮世絵では海女とタコはセットでよく描かれたそうだ。

 各地の伝承や絵の中で、海女は異世界と平常の世界とを結びつける存在として登場する。学芸員の縣(あがた)拓也さんは「優れた潜水技術に神秘性を感じていたのでは」と話す。

(2016年4月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)