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「古瀬戸茶入(ちゃいれ) 銘『伊予簾(すだれ)』」

人から人へつながる茶道具(昭和美術館)

 


美博ノート
室町時代。下は仕覆で制作年不明。右から2番目に緞子、ほかは金襴の生地が使われている

 

 村田珠光がわび茶を始めた室町時代から、茶道具は茶をたてる道具としてだけでなく、所有者が銘を付けたり、手紙を添えたりして愛(め)でながら受け継いできた。今展では40点の茶道具を展示し、茶人の思いや茶人同士の交流を紹介する。

 本作は江戸初期の大名茶人、小堀遠州ゆかりの「中興名物」の茶入。黒釉(こくゆう)のまだら模様にもの悲しさを感じた遠州が、わびしさを歌った恵慶(えぎょう)法師の和歌から「伊予簾」と名付け、愛蔵した。その後、大名や数寄者たちの手に渡った。

 高さ7センチにも満たないが、遠州直筆の色紙や遠州の息子が銘の由来を書いた軸など、多くの付属品がある。中でも茶器を入れるための布袋「仕覆(しふく)」は四つも仕立てられ、金襴(きんらん)や緞子(どんす)など高級生地が使われている。歴代所有者がいかに愛着を持っていたかを物語る。

(2016年4月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)