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右から茶杓、筒(いずれも竹製)、箱(桐製) |
茶人が自ら作ることが主流だった茶杓は、その人柄やこだわりを反映するものが多い。
「弱法師」と銘が付けられた本作は、千利休の孫で千家流の基礎を築いた江戸初期の茶人、宗旦(そうたん)による茶杓。弱法師とは能の曲目の一つ。他人のうそを信じて息子を勘当してしまった父親が罪滅ぼしのために寺で施しをしていると、弱法師と呼ばれ、盲目の乞食(こじき)となった息子が現れて再会するという物語だ。
この話は宗旦の身の上と重なるとされる。自身にも4人の息子がいて、それぞれ千家流を継いだが、長男・宗拙(そうせつ)だけは素行が悪かったため勘当され、宗旦が75歳の時に先立ってしまう。茶杓の細く曲がり弱々しい様子が、弱法師がつく杖を表しているようにも見える。
宗旦のひ孫・覚々斎(かくかくさい)が筒、その弟子、不及斎(ふきゅうさい)が箱を作った。