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「黒楽割高台茶碗(くろらくわりこうだいちゃわん)」

人から人へつながる茶道具(昭和美術館)

 


美博ノート
江戸時代初期

 

 茶道具を作る技もまた人から人へ受け継がれてきた。

 楽焼は桃山時代に千利休の指導の下、瓦職人だった楽家の初代・長次郎が始めた。ろくろを使わず、手づくねで形を作るため、緩やかなゆがみがあり、手になじむ。

 中でも3代・道入(どうにゅう)は利休の孫、宗旦(そうたん)の引き立てで製作に励み、楽家随一の名工と称される。本作は高台に2カ所の切り込みが入った割高台形。釉薬(ゆうやく)を重ね掛けし、流れる様を表現するほか、飲み口に厚みを出したり、垂れた釉薬の裾の一部を白っぽく変化させたりするなど、随所に道入の高い釉技が見られる。

 現在の楽家当主は15代・吉左衛門。450年経った今も、京都の地で変わらない製法を守っている。

(2016年5月10日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)