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「ブラフマー」

アンコール・ワットへのみち(名古屋市博物館)

 


美博ノート
砂岩(部分)

 

 年間約300万人の観光客が訪れるカンボジアの世界遺産、アンコール・ワット。12世紀にこの巨大遺跡を生んだアンコール王朝(9~15世紀)は、ヒンドゥー教と仏教の影響を色濃く受けながら、独自の信仰と文化を発展させた。今展では、その美術様式が花開くまでを石像など116件で紹介する。

 四つの顔で世界を見渡し、口元に優雅な笑みを浮かべるのは、創造神ブラフマーだ。シヴァ、ヴィシュヌと並んでヒンドゥー教の三大神だが、造像例は多くない。高さ111センチの本作は10世紀後半の遺跡から出土した。ここまで保存状態の良い丸彫りは珍しいという。

 近寄ると心を見透かされるような崇高さが漂う。「目が合うようで合わないところが神秘的」と学芸員の藤井康隆(やすたか)さん。

(2016年5月17日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)