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「蛙と魚文貝形陶器」

陶芸家としてのエミールガレ展(大一美術館)

 


美博ノート
1883年

 

 貝殻を背に乗せ泳ぐ2匹のコイの手綱を引くのはカエル。このユニークな構図は、ラファエロの名画「ガラテアの凱旋(がいせん)」のパロディーといわれる。本家は女神ガラテアが貝殻に乗り、2頭のイルカを御している。それらのモチーフをカエルなどに替えた意図は不明だ。ガレは自由な発想力で思いがけない作品を作り出し、人々を驚かせてきた。その真骨頂と言えるだろう。

 高さ31センチ、幅36センチと大ぶりな置物は、まるで本物のようなカエルの皮膚や貝殻の色が目を引く。これは、エナメルを何層にも塗り重ねて表現しているという。「このリアルな質感はガラスでは出せない。陶器だからこその魅力が表れた作品」と市原理江子学芸員は話す。

(2016年7月12日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)