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絹本着色 |
本をひざに置いて読書をする女性――花も鳥も登場しないこの絵が、今展では花鳥画の仲間として紹介されている。
明治~昭和20年代にかけて美人画の第一人者として活躍した上村松園が描いた。新緑の樹木を思わせる爽やかな着物の女性が読書を中断し、窓の方をはっと振り返っている。外から何か聞こえたようだ。題名は「時鳥一声」。夏の到来を告げるホトトギスのさえずりに、「もう田植えの季節なのね」と物思いにふけっているのだろうか。
日本人は鳥の声や虫の音を聞いて風流を感じる、独特な美意識を持っている。直接的に鳥を描かずとも、絵の主題は「ホトトギス」だと違和感なく受け入れられるのだ。花鳥をめでる文化を、「美人画」という違ったジャンルで表現した作品だ。