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1895年 OZAWAコレクション |
アールヌーボーを代表する画家アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)。本展ではグラフィック作品を中心に紹介し、独自のモチーフ使いや画面構成などに迫る。
デビュー作にして代表作となったのは、舞台「ジスモンダ」の宣伝ポスター。当時のフランスの大女優サラ・ベルナールを描いた。彼女の姿をほぼ等身大で捉えた縦長の画面からは、舞台の臨場感が伝わってくる。また、彼女が手にする棕櫚(しゅろ)の葉や衣装の裾に目をやると、自然に文字の部分に視線が向くよう誘導される。いずれも視覚に訴える工夫が施されたデザインだ。
さらに画期的だったのは金色のインクを用いた点。学芸員の奥村綾乃さんは「消耗品のポスターに、宗教画のような高級な印象を与えた。大衆が抱くサラのイメージと合致したのでしょう」と分析する。この作品でミュシャの名は一気に広まった。