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(部分) 2005年 岐阜県美術館蔵 |
一面真っ白な展示空間は、荘厳な結婚式場のようだ。「白」がテーマの本展。陶芸作品など29点で、白で表現される世界の可能性を探る。
縦2×横8・5メートルの本作は、岐阜市出身の現代美術家、大巻伸嗣(しんじ)の平面作品。約千本の修正液とクリスタルパウダーを使い、白いアクリル板に絶滅危惧種の草花を描いた。葉や茎が漂うように絡まる様は、繊細なレースを思わせる。
白に白を重ねたため、一見絵柄は見えづらい。近寄って目を凝らすと、作品に自分の影が映り込む。失われていく風景に、誰もが無関係ではないことを大巻は示唆する。
経済成長によって奪われていく土地の記憶や自然、生物たち。「移りゆく時代の中で見えづらくなっていく存在の誰にも届かない声を、草花の姿に託しました」と大巻は話す。