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部分 1986年 岐阜県美術館蔵 |
密集し、会場の一角を埋め尽くす白い塊たち。海中を漂うクラゲの群れのようにも、宇宙からやって来た謎の生命体のようにも見える。
このインスタレーションを手がけたのは、茨城県笠間市を拠点に活動する造形作家、伊藤公象(こうしょう)。約3ミリの厚さにスライスした陶土を即興的に丸めて高温で焼き上げ、千個並べる。1974年から続けているシリーズだ。
ひとつとして同じものがないピースは、何百、何千と並べることで、派生する生物のような広がりを見せる。無数の柔らかな曲面は「有機的な愛の襞(ひだ)」を表し、白色は「無垢(むく)なるもの」の象徴。不穏な社会情勢の中で、誰もが豊かな愛に満ちた生活を送ってほしいと伊藤は言う。
儚(はかな)さ、静けさ、崇高さ。現代を映す多様な白の表現に酔いしれた。