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「千歳山の蟇(ひき)図」

川喜田半泥子の遊び心 銘の達人(石水博物館)

「千歳山の蟇(ひき)図」
1958(昭和33)年ごろ

 陶芸だけでなく書画にも親しんだ半泥子(はんでいし)。本作はヒキガエルを描いた最晩年の作品で、自画像だという。
 半泥子は30歳ごろから数回参禅し、のちに修行後の自分は楽観的になったと著書に書いている。ユニークな書画で禅の教えを説いた江戸時代の僧、仙厓(せんがい)の考え方にも共感していた。仙厓はうずくまるカエルを描き、そこに座禅をする人の姿を重ねた。形は似ているのにカエルに悟りが開けないのはなぜか、という問いかけを込めたとされる。
 半泥子の絵には「まかり出(い)てたるハ千歳山のひきニて候(そうろう)」という言葉が。自邸で座禅をする自身をカエルに見立てたところにユーモアを感じる。「禅との出会いが、豪放磊落(ごうほうらいらく)な人格形成につながった」と主任学芸員の龍泉寺由佳さんは話す。

(2017年3月14日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)