ひざを抱えるようにして座り、柔らかな表情を浮かべる女性。夢を見ているのだろうか。それとも、鼻歌を口ずさんでいるのだろうか。
「水面に浮かぶ舟のように、刻々と変化し、揺れ動く心の様を形にした」と語るのは、ガラス作家の小田橋昌代。石膏(せっこう)で型を作り、ガラスの粒を詰めて窯で鋳造するキルンキャストという手法で、人物や動物の立体を手がける。
電気炉で約一週間かけて焼成した後、女性の顔や足を、エナメル顔料で絵付けした。見る人が自分の感情を自由に重ねられるよう、「喜怒哀楽のない、フラットな表情」にしたという。
溶かす、鋳込(いこ)む、彫る、曲げる。様々な技法で制作された27点から、ガラスの奥深い魅力が見えてくる。