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「鞠子(まりこ) 名物茶店」

歌川広重 東海道五拾三次展(名古屋ボストン美術館)

「鞠子(まりこ) 名物茶店」
天保4(1833)年ごろ 横大判錦絵

 江戸・日本橋から京・三条大橋まで約492キロメートル。「東海道五拾三次」は浮世絵師、広重(1797~1858)の代表作だ。本展では、三菱東京UFJ銀行貨幣資料館所蔵の保永堂版55点に類作の行書や隷書などを加え、旅の楽しみを紹介する。

 江戸時代、庶民の旅の目的は、お伊勢参りを名目とした「物見遊山」。一番の目当ては、その土地のおいしい名物を味わうことだった。

 本作は、東海道で最も小さな宿場、鞠子(現静岡市駿河区丸子)が舞台。梅の花が咲く早春、茶店で名物とろろ汁を食する旅人が描かれている。ヤマイモをすり下ろし、だし汁と合わせて麦飯にかけたとろろ汁は、滋養のある食べ物として人気があったようだ。グルメが楽しみなのは今の旅と変わらない。

(2017年4月11日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)