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熊谷守一「千日草」

所蔵企画展 花(メナード美術館)

熊谷守一「千日草」
1963年 板、油彩

 多彩な「花」が咲き誇る展示室。その中で、明快な輪郭線とわずかな色で描かれた素朴な絵に目が留まった。「熊谷守一の庭」と題した一角。ムクゲやユリなどを描いた7点が並ぶ。

 コロンとした円形をリズミカルに配した本作は、草丈50センチほどにもなるセンニチコウ(別名・千日草)だ。寄ってきたオレンジ色のチョウが画面を生き生きとさせている。

 岐阜県出身の画家熊谷(1880~1977)は、東京都豊島区の家で32年から終生暮らした。晩年は自宅の庭にゴザを敷き、日がな一日寝そべって、アリなど自然の中の小さな命を観察し続けた。その温かなまなざしが、作品から伝わってくる。

 本展では多くの芸術家が描いた「花」をテーマに、絵画や陶磁器など66点を公開している。

(2017年6月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)