牡丹(ぼたん)が題材の日本画や油彩画、陶磁器を集めた展示室。大輪の花をピンク色などで華やかに描く作品が並ぶなか、静かな表情をたたえていたのが本作だ。日本画家村上華岳(かがく)(1888~1939)の最晩年の作品「牡丹之図」。赤みを帯びた紙に墨一色の濃淡で表現している。
牡丹を好んで描き、絶筆も牡丹の絵だった華岳。ともに展示している19年ごろの作品は艶(あで)やかに彩色されている。だが、その後ぜんそくの発作を起こすようになり、画壇との関係を断って自らの画境を深めることに専心してからは、墨による表現が主になっていった。「花の気品と静謐(せいひつ)さ、画家の精神性を感じます」とメナード美術館副館長の村上久美さんは話す。