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村上華岳「牡丹之図」

所蔵企画展 花(メナード美術館)

村上華岳「牡丹之図」
1937年 紙本墨画

 牡丹(ぼたん)が題材の日本画や油彩画、陶磁器を集めた展示室。大輪の花をピンク色などで華やかに描く作品が並ぶなか、静かな表情をたたえていたのが本作だ。日本画家村上華岳(かがく)(1888~1939)の最晩年の作品「牡丹之図」。赤みを帯びた紙に墨一色の濃淡で表現している。

 牡丹を好んで描き、絶筆も牡丹の絵だった華岳。ともに展示している19年ごろの作品は艶(あで)やかに彩色されている。だが、その後ぜんそくの発作を起こすようになり、画壇との関係を断って自らの画境を深めることに専心してからは、墨による表現が主になっていった。「花の気品と静謐(せいひつ)さ、画家の精神性を感じます」とメナード美術館副館長の村上久美さんは話す。

(2017年6月20日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)