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歌川広重「名所江戸百景 浅草田圃酉(たんぼとり)の町詣(もうで)」

浮世絵ねこの世界展(豊橋市二川宿本陣資料館)

歌川広重「名所江戸百景 浅草田圃酉(たんぼとり)の町詣(もうで)」
1857(安政4)年 大判錦絵

 日本では平安時代から愛玩動物としてかわいがられていた猫。本展では、江戸から明治にかけて活躍した浮世絵師が、猫を題材にした浮世絵100点を紹介する。

 本作は、歌川広重(1797~1858)の晩年の大作「名所江戸百景」の一枚。猫の視線の先には浅草の田んぼが広がり、熊手を手にした酉の市の参拝客の行列がシルエットのように描かれている。市が開かれる鷲(おおとり)神社の近くに吉原遊郭があったことから、ここは遊女の部屋と思われる。左隅には客からの土産物だろうか、熊手の飾りが付いたかんざしが転がっている。

 「当時の暮らしに猫が自然になじんでいます」と、豊橋市二川宿本陣資料館学芸員の和田実さん。格子窓から外を眺める猫の後ろ姿は、どこか哀愁漂う。

(2017年7月25日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)