猫好きとして知られる歌川国芳(1797~1861)。家では十数匹の猫を飼い、懐にも子猫を入れていたという。
そんな国芳が描いた本作は、猫と戯れる美人。絵柄を切り取ってうちわに貼ると、手鏡のように見える趣向だ。
黄八丈を着た娘が、鏡に映った姿を猫にも見せようとしている。無邪気な娘とは対照的に、迷惑そうに嫌がる猫の表情が何とも言えない。
娘の左手で握られた猫の指は少し開き、今にも爪で引っかきそうだ。このような細部まで描けたのは「普段から身近に猫と接していた、国芳ならではの観察眼と言えます」と、豊橋市二川宿本陣資料館学芸員の和田実さんは話す。