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歌川国芳「鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘」

浮世絵ねこの世界展(豊橋市二川宿本陣資料館)

1844(弘化元)年頃 団扇絵判錦絵
1844(弘化元)年頃 団扇絵判錦絵

 猫好きとして知られる歌川国芳(1797~1861)。家では十数匹の猫を飼い、懐にも子猫を入れていたという。

 そんな国芳が描いた本作は、猫と戯れる美人。絵柄を切り取ってうちわに貼ると、手鏡のように見える趣向だ。

 黄八丈を着た娘が、鏡に映った姿を猫にも見せようとしている。無邪気な娘とは対照的に、迷惑そうに嫌がる猫の表情が何とも言えない。

 娘の左手で握られた猫の指は少し開き、今にも爪で引っかきそうだ。このような細部まで描けたのは「普段から身近に猫と接していた、国芳ならではの観察眼と言えます」と、豊橋市二川宿本陣資料館学芸員の和田実さんは話す。

(2017年8月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)