目を見開き、今にも襲いかかってきそうな形相の化け猫。よく見ると、大小様々な猫を集めた「寄せ絵」になっている。さながら、花や野菜を組み合わせて肖像画を描いた、16世紀の画家アルチンボルドのようだ。
作者は歌川国芳の門弟、芳藤(よしふじ)(1828~87)。子ども向けの浮世絵「おもちゃ絵」を得意とした。
本作は、47年に上演された歌舞伎「尾上梅寿一代噺(おのえきくごろういちだいばなし)」に登場する化け猫がモチーフ。御簾(みす)から出てくる化け猫の顔は、目は鈴、舌は首輪のひもと、全てが猫にちなんだもので構成されていて、芳藤の遊び心がうかがえる。
鼻部分の猫は「蹲踞(そんきょ)した力士の後ろ姿のようにも見え、怖さの中にもユーモアを感じます」と学芸員の和田実さん。