絵筆や指輪、瓶、メガネ――来館者が思い思いに描いた絵が並ぶ。
用意された様々な物から、作家の作品を鑑賞して「自分が感じたこと」を表す対象を選び、木箱に集める。それらを色鉛筆でスケッチし、自ら壁面に展示し、見比べる企画だ。
描く物は、作品と鑑賞者をつなぐコネクターの役割を果たす。同じ作品に向き合ったとき、他人はどう感じたのか、その違いを知識に頼ることなく「あんな感じ、こんな感じ」と物を通して知ることができる。
こうした「アートコミュニケーション」を体系化して始めたのが館長の日比野克彦だ。「描くことで、イメージが定着でき、感じ方の違いを楽しむという新たな鑑賞方法が生まれた」と学芸員の廣江泰孝さん。