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石川謙二「おわかれ」

山下清とその仲間たちの作品展(瀬戸市美術館)

1939年
1939年

 メキシコで革命や壁画運動の影響を受け、児童美術教育に尽力した洋画家の北川民次。その北川が、山下清よりも高く評価したのが、石川謙二(1926~52)だった。

 浅草で保護され、千葉県の八幡学園へ。重い障害があり、右目の視力はほとんどない状態だった。入園当初はペン画を描いていたが、猛然とパステルクレヨンに移行したのは12歳の時。本作は、小さな港から出征する兵士と見送る家族を捉えている。鮮明な色彩と力強い輪郭線の表現力に、北川は「そのタレントがうらやましい」と称賛する。

 学園には、専門の美術教員は一人もいない。だが、山下清以外にも才能に満ちた園児がいた事実は、彼らが「芽吹き、花開くこと」を信じ続けた学園の教育方針の賜(たまもの)といえる。

(2017年11月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)