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「黒織部茶碗(わん)」

天然黒ぐろ 鉄と炭素のものがたり(INAXライブミュージアム)

「黒織部茶碗(わん)」
美濃・元屋敷窯、桃山~江戸時代

 力強さや権威、シックなど様々なイメージを持つ黒。本展では、「黒」とその色素となる炭素と鉄に注目。やきもの、漆、墨、絵具(えのぐ)など、黒を生み出す技術や道具を紹介する。

 黒織部(おりべ)は、桃山時代以降、古田織部ら茶人に好まれてきたゆがみのある茶碗。自然光のみが差し込むほの暗い茶室では、独特のなまめかしい黒さを演出する。「黒い器はお茶の緑が引き立ち、茶人がこぞって求めたのでは」と企画担当者は話す。

 鉄分を含む釉薬(ゆうやく)を施し、釉が溶けた瞬間に窯から引き出す技法「引き出し黒」を用いた。ゆっくり冷ますと赤や茶色などが表れるが、1000度を超える高温時に一気に引き出して急冷すると、一挙に黒く変化する。茶碗の内側に残る鉄かぎの引っかき跡は、黒を追究してできた「名誉の傷あと」だ。

(2017年12月26日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)