植物染料にこだわり紬織(つむぎおり)を芸術の域に高めた染織家・志村ふくみ(93)。初期から2003年までの70点を2期で紹介する。
滋賀県近江八幡市に生まれたふくみは、叔父の養女として、東京や上海などを転々とする。結婚、出産を経て、31歳で織物の道へ。近江八幡で、実母・豊(とよ)の指導のもと、制作を始めた。
「霧」(展示は2月12日まで)は初期の藍染めの代表作。藍は、藍甕(あいがめ)から引き上げた瞬間、緑色に発色し、空気に触れると藍色に変わる。本作では「藍になりたがっている緑、緑になりたがっている藍」の重なりを表現したという。長女で染織家の洋子さんは「藍を好んだ豊の着物から、新しく発想したそうです」と話す。ふくみが「すべての色の中心」という藍。豊の藍への思いを受け継いだ作品だ。