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志賀理江子「予感と夢」

ビルディング・ロマンス 現代譚(ばなし)を紡ぐ(豊田市美術館)

志賀理江子「予感と夢」
2018年

 1組4作家の作品から、家族や土地など身近な関係性の中に潜む「現代の物語」を読み解く本展。

 写真家の志賀は、大きく引き伸ばした写真を壁一面に配したインスタレーションを見せる。写真に写るのは、貨物用エレベーターの中で眠るように目を閉じ、寄り添う人々だ。

 被写体は皆、機械産業の従事者だという。土着の物語を視覚化する作品を手がける志賀が、自動車産業の集積地、豊田の物語として選んだテーマは「機械と人」。「機械化された現代に潜む『生命のノイズ』を、志賀は見つめている」と学芸員の能勢陽子さんは話す。

 機械の無機質さと眠りから連想される「死」の感覚と、被写体の生々しい存在感とが共存する。「死と再生の物語でもあるんです」

(2018年2月13日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)