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アピチャッポン・ウィーラセタクン「花火(アーカイブス)」

ビルディング・ロマンス 現代譚(ばなし)を紡ぐ(豊田市美術館)

アピチャッポン・ウィーラセタクン「花火(アーカイブス)」
2014年

 タイ・チェンマイを拠点に、記憶や夢、社会問題をテーマにした作品の制作を続ける映画監督・映像作家のアピチャッポン・ウィーラセタクンは、映像をガラス板に投影させたインスタレーション作品を見せている。

 タイ東北部の夜の寺院で断続的に打ち上げられる、花火の映像。閃光(せんこう)に照らされ、動物をかたどった奇妙な彫刻や、庭園を歩く恋人の姿が闇に浮かんでは消える。明滅する光が夢と現実、生と死を行き来する幻想性を示す一方で、鳴り響く破裂音は銃声を連想させもする。

 同地は1960~80年代に、共産主義者が迫害された歴史を持ち、彫刻群と恋人は、抑圧への抵抗や生のシンボルとして表れる。「死者の鎮魂と、生の『ロマン』が共存する作品」と学芸員の能勢陽子さんは話す。

(2018年2月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)