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「富貴有余」

春を迎える 年画に込められた願いと意図(名古屋大学博物館)

「富貴有余」

 中国では旧正月になると、吉祥のモチーフが描かれた「年画」を自宅の玄関や室内に飾る風習がある。都市や農村で1千年以上続いてきた、この風物詩を本展では「視覚媒体」としてとらえ、意味合いを探る。

 ふくふくとした男児が描かれた本作。北京にほど近い天津にある街・楊柳青で清代に彫られた版木をもとに、1960年代に刷られた。黒い輪郭に丁寧な手彩色が施されているのが特徴だ。

 左手の「蓮」の花は富貴の象徴と同時に、「つながる」を意味する「連」と同音で縁起がよいとされる。背後の「金魚」は、「魚」が「余」と同じ「ユゥ」という発音で、「金が余る」につながる。

 年画研究を続ける愛知文教大学教授の辻千春さんは、「20世紀半ばまで、年画に親しんだ庶民のほとんどは文字が読めませんでした。彼らは描かれたモチーフからメッセージを読み取っていたのです」と話す。

(2018年3月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)