中国では旧正月になると、吉祥のモチーフが描かれた「年画」を自宅の玄関や室内に飾る風習がある。都市や農村で1千年以上続いてきた、この風物詩を本展では「視覚媒体」としてとらえ、意味合いを探る。
ふくふくとした男児が描かれた本作。北京にほど近い天津にある街・楊柳青で清代に彫られた版木をもとに、1960年代に刷られた。黒い輪郭に丁寧な手彩色が施されているのが特徴だ。
左手の「蓮」の花は富貴の象徴と同時に、「つながる」を意味する「連」と同音で縁起がよいとされる。背後の「金魚」は、「魚」が「余」と同じ「ユゥ」という発音で、「金が余る」につながる。
年画研究を続ける愛知文教大学教授の辻千春さんは、「20世紀半ばまで、年画に親しんだ庶民のほとんどは文字が読めませんでした。彼らは描かれたモチーフからメッセージを読み取っていたのです」と話す。