今回は横山大観(1868~1958)の「霊峰春色」=写真上=と、橋本関雪(1883~1945)の「東海神秀」=同下=の富士山対決。いずれも第2次大戦前、国威発揚のために描かれたという。
大観は、近代日本画の発展に大きく貢献した巨匠。自身の絵の売り上げを国へ献金して、戦闘機が購入されたこともあった。「本作では、富士山と桜を日本の象徴として描いています。日本を愛した大観の気概を感じます」と学芸員の前田明美さんは話す。
墨の濃淡で富士山を表現した関雪の作品には漢詩が添えられ、締めくくりに「此世男子八景也(このよのだんしはっけいなり)」とある。「強い体や大きな度量など、当時求められた男性像をうたっている。富士と日本男児を重ね合わせたんですね」