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「ヒナゲシの活(い)けられた花瓶」

ヴラマンク展 絵画と言葉で紡ぐ人生(パラミタミュージアム)

「ヒナゲシの活(い)けられた花瓶」
1936~37年 油彩 カンバス

 風景画を愛好したモーリス・ド・ヴラマンク(1876~1958)だが、静物画も繰り返し描き続けている。瓶やピッチャー、果物や野菜、ナイフを入れた大きなパン、肉の切り身といった素朴なモチーフに取り組んでいる。中でも多く描いたのが、花だ。それらは全て妻のベルト・コンプが家の中に飾ったものだったという。

 本作にも、雪景色などの風景画に見られるような色彩のコントラストが用いられている。「花瓶などの白の使い方が特徴的です」と学芸員の湯浅英雄さん。アイデンティティーの一つであった白色が存在感を放ち、暗い色の背景から明るい色の花や花瓶が浮かび上がるように見える。ヴラマンクの「色彩家」としての優れた特質を示す作品の一つだ。

(2018年5月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)