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「都鄙秋興」

尾州徳川の花相撲(ヤマザキマザック美術館)

「都鄙秋興」
1857年

 縮れた葉、牡丹(ぼたん)のように折り重なった花びら。突然変異が生み出す「変化朝顔」は江戸の文化文政期(1804~30)、熱心な愛好家らの手で広がり、珍重さを競う品評会も催された。

 本作は、江戸の植木商・成田屋留次郎が出版した変化朝顔の図譜三部作のうちの一部。120点余りの彩色図には、見た目の特徴を捉えた品種名と育成者名が添えられている。中でも目立つのは、江戸以外の育成者。タイトルの「都鄙(とひ)」も、栽培の担い手が郊外にもいたことを示す。

 朝顔の番付表や図譜も多く出回った。「出版文化の発展も後押しして、園芸植物の魅力や栽培技術が広がった」と学芸員の坂上しのぶさんはみる。

(2018年6月5日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)