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「大日本物産図会」

こまったときのタコだのみ(鳥羽市立海の博物館)

1877年 ケンショク「食」資料室蔵
1877年 ケンショク「食」資料室蔵

 海からぬっと現れた巨大ダコが、舟に足をからめて襲いかかる。三代歌川広重(1842~94)によるこの錦絵は、富山県滑川が舞台。諸国名産品の採取、生産工程を紹介する「大日本物産図会」に収められている。添えられた文章には、吸盤一つで一日の食事が足りると書かれ、その大きさを物語る。

 「北陸など寒い地域には、大ダコ伝説が多いんです。その地域で捕れる3メートル近いミズダコの存在が影響しているんでしょう」と縣(あがた)拓也学芸員。

 タコの民話や伝承には、人や牛を海に引きずり込む話と、神仏の使いとして、仏像や神宝を抱えた姿で上陸する話が多いとか。「伝説には善悪の二面性があり、タコ自身のように、つかみどころがありません」

(2018年8月7日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。記事・画像の無断転載・複製を禁じます。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)